くわにゃん(@kuwanyan98)です。
投資に役立つ経済知識の第3弾は「外国為替市場の変動要因 〜経常収支と金利〜」についてです。
「勝手に教育シリーズ」第2弾では実体経済とマネー経済について説明しました。
今回は国の経済の状況が分かる経常収支の内訳(貿易収支・サービス収支・所得収支)について解説します。
この記事を読むと為替を動かす要因となる経常収支と金利について理解することができるようになります。
外国為替市場は需要と供給の関係で動く
外国為替市場の変動要因といっても非常に単純です。
通貨の場合も物価と同じで需要と供給によって決まります。
需要が少く売られる通貨→価値が低下
経常収支による変動
為替の需給関係を考える上で、その国の経常収支の状況を理解することが重要です。
経常収支と聞くと難しそうですが、わかりやすく日本の場合を例にとって解説します。

わけわからん、ニャン

だまって聞いてろ
収支と聞くと難しいですが、要は経常収支が黒字ということは、日本の企業全体として物を売ったり、海外進出して利益を上げたりする経済活動を通じて日本がお金を儲けた状況です。
逆に経常収支が赤字ということは、全体の取引でお金が減ってしまった状況です。
経常収支は、以下の4つから成り立ちます。
これら経常収支を構成する4つの内訳を2016年の日本のデータを元にグラフで確認してみます。
このグラフの中で一番右端の「資本移転等収支」は発展途上国への食料などの無償援助の収支で、微々たるものなので無視してもいいものです。
よって日本の場合の経常収支は、「貿易収支」、「サービス収支」、「所得収支」について理解していればOKです。
貿易収支とは
貿易収支というのは、海外との「商品の取引」についての儲けを表します。
貿易黒字・・・貿易収支がプラス
貿易赤字・・・貿易収支がマイナス
トランプ大統領がアメリカが貿易赤字が大きいことに対して怒っていますが、赤字と言っても単に安い海外から商品をたくさん買ったというだけです。
全く同じ商品を考えた場合、一人当たりの労働賃金の安い中国と労働賃金の高いアメリカ人が作った商品では、中国で作った商品の方が安くなるのは当たり前です。
ところがこの状況を是正するためにトランプ大統領は中国で作った安い商品に関税をかけて価格を高くして売れにくい状況を作ろうとしているわけです。

自国の雇用を守るためにやっているとはいえ、なんか変ですよね。
アメリカは世界最大の貿易赤字国なので仕方ないかもしれませんが。
続いて日本の貿易収支の推移を財務省のHPのデータを元にグラフ化してみます。
このグラフをいると1998年あたりから右肩下がりになっています。
私が小・中学生の頃は日本は輸出大国だと習いましたが、今や日本は輸出大国ではありません。
グラフをみると2011年から2015年まではマイナス(貿易赤字国)になっているほどです。

日本が貿易赤字国と聞くとちょっとびっくりしますよね。
これについては以下の所得収支のところで説明します。
サービス収支とは
先ほどの貿易収支のところでは「商品の取引」と書きましたが、サービス収支というのは「サービスの取引」のことです。

わけわから・・・
「サービスの取引」というのは商品の取引ではないもの、例えば海外でホテルに泊まった時の宿泊料などが該当します。
要は何か商品を買うための取引ではなくて、目に見えないサービスの購入のためにお金を使う場合です。
日本のサービス収支のグラフです。
グラフをみてわかるように日本の場合はサービス収支は赤字です。
ということは外国人が日本でお金を使う量より、海外で日本人がお金を使う方が多いということです。
ただ近年の訪日外国人観光客の急増のニュースにもあるように日本のサービス収支の赤字額はかなり減ってきています。
所得収支とは
さきほど日本の貿易黒字が減少していると書きました。
原因は日本の産業構造に変化があったためで、ここで説明する所得収支の推移をみると理解できます。
備考
所得収支に占める直接投資収益の割合は2000年代初めは、所得収支の20%程度で推移していたものが、2017年には約50%にまでなっています。
今や所得収支が日本の経常収支の稼ぎ頭となっています。
このように産業構造が変化した流れは以下の図の通りです。
左側が昔の状況で、右側が現在の状況です。
昔の状況を説明すると、輸出で稼げば稼ぐほど貿易収支が増大し、円が買われるため円高になり、円高になると日本の輸出企業はそれまでどおり稼ぐのが難しくなりました。
そして現在の状況ですが、日本の企業は海外に生産拠点を移し、為替の影響を受けなくてさらに労働力の安い海外で生産し、外貨(ドルなど)を稼いで安定した利益を確保するようになります。
この流れが所得収支の増大に繋がったわけです。
日本の所得収支の推移をグラフ化しました。
2000年あたりから所得収支が大きく増えているのがわかります。
そしてこれまで説明した、経常収支・貿易収支・サービス収支・貿易収支をグラフで表示します。
貿易収支(青色)が右肩下がりで減少しているのに対して、所得収支(ピンク)がそれを穴埋めする形で増えているのがわかります。
先ほど説明した昔は国内で生産し輸出の拡大に伴う貿易黒字の拡大、今は海外生産による所得収支の拡大の流れです。
このように日本の産業構造自体が変わってきています。
日本の場合は経常収支が黒字なので、日本全体としてお金を稼いでいる状況です。
稼いだ外貨は日本円に変換される(つまり日本円が買われるということ)ので、円高に進みやすいのがわかります。
こんな感じで経常収支が為替に影響を及ぼすわけです。

ようやく経常収支と為替が結びつきました。
経常黒字=日本全体が豊かになっているということは、個人でも今のうちに投資を開始して早く資本家となることで、この恩恵を受けられると思うのですが、いかがでしょうか。
金利による変動
続いて金利による影響です。
実はこの金利の方が為替に及ぼす影響が大きいです。

じゃ早く言えよ
金利は各国の中央銀行(日本の場合は日銀)が経済の状況やインフレ具合をみて決めます。
景気をよくしたい場合は、銀行に預けるより市場にお金が出回るよう金利を下げます。
逆に景気がバブル期のように加熱しすぎる場合は、銀行にお金を預けた方がメリットが出るように金利をあげて、市場からお金を回収します。
こんな感じで中央銀行が金利を調整するわけです。
では実際に金利の上下によってどのように為替に影響するかみてみます。
以下のグラフはアメリカとオーストラリアの政策金利の推移です。
リーマンショック後アメリカはすぐにゼロ金利政策を取りましたが、オーストラリアは徐々に下げていきました。
その後アメリカは景気の回復に合わせて2016年初めから徐々に金利を上昇させ、2018年3月にはとうとうオーストラリアの金利と逆転しました。
この金利の変動とAUD/USDのチャートを比較してみてみます。
上がAUD/USD、下が金利のグラフです。
グラフ中の矢印の部分で、金利が上昇するとAUD/USDも上昇、金利が下落するとAUD/USDも下落しているのが見て取れるかと思います。
それだけ金利と為替が密接に関係しているということですね。
ちなみに日本は超低金利通貨であるため、海外の投資家の中には円を売って高金利の通貨を買って利ざやをかせぐ「円キャリートレード」という取引を行なっている人たちがいます。
しかし金融危機になると「円キャリートレード」の解消(売っていた円を買う動き)から、急速な円高になります。
実際に2008年のリーマンショック時の円高は「有事の円買い」のほかこの「円キャリートレード」の解消の影響が大きいです。
まとめ
為替の変動要因となる経常収支と金利についてまとめました。
両方とも為替のファンダメンタル要素であり重要な要素です。
これらの情報を元に実体経済だけではなく数十倍の規模のマネー経済も為替の取引を行い、為替を変動させるわけです。
また私たち個人投資家にとってわかりやすいのは金利の変動の方ですね。

先進国通貨であれば金利が高い方の通貨(プラススワップ通貨)を選べば、長期的に考えるとプラスに働きそうですね。
米ドルが金利値上げを見送っている今、豪ドルが利上げを発表すると長期で買ってみたいと思っています。
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