
ピケティの本「21世紀の資本」ではどんなことを言っているの?分かりやすく知りたいなぁ。
こんなお悩みにお答えします。
☑️本記事の内容
- ピケティが示す資本主義の基本原則2つ
- 資本主義の基本原則からピケティの主張3つを分かりやすく解説
- 世界中で富の格差は広がってきている
- 資本収益率(r)>国民所得の収益率(g)
- 富の格差を是正するには資本への累進課税が必要
☑️本記事の執筆者

投資歴15年超のサラリーマン投資家です。
私のブログでは投資初心者・中級者の方々に向けて基礎知識を短期間で身に付けられるよう分かりやすくまとめてます。ぜひご覧ください!
トマ・ピケティは1971年にフランスで生まれ、今世界で最も注目されている経済学者の一人です。
ピケティは、15年間かけて収集した3世紀にもわたる経済のデータを元に、「21世紀の資本」という本を2013年にフランスで発表しました。
この本では世界中で翻訳され、資本主義が構造的に抱える格差という矛盾を過去の膨大なデータを元に指摘しており、700ページにも及ぶ経済書でありながら、累計160万部以上も売られている本です。
日本でも一時は書店の店頭に山積みにされ、ブームとなりました。
今回の記事では「21世紀の資本」で解説されている内容を分かりやすく解説します。

ピケティが示す「r>g」というのは有名で、ネットやSNSでも見たことがあるかもしれません。今回の記事を読むと「やっぱり投資がいいんじゃん」っていうことが分かるかと思います。
ピケティが示す資本主義の基本法則
ピケティは著書の中で、資本主義の基本法則を2つ示しています。
【第2基本法則】β=s/g=資本ストック
ピケティの資本主義の第1基本法則
まずは第1基本法則の説明です。
α;GDPに占める資本所得の割合
r;資本収益率
β;資本ストック
この式は簡単にいうとGDP全体が資本所得と労働所得がどれぐらいの割合になるかを示すものです。
この中で、先進国の資本収益率r=5%で、先進国の「資本ストックβ」はおおむねGDPの6倍程度ですので、先ほどのGDPに占める資本所得の割合(α)は以下のようになります。
GDPに占める資本所得の割合が30%なので、日本の2018年のGDPの実質値が約500兆円なので、日本のGDPのうち資本所得(30%)と労働所得(70%)の内訳は以下のようになります。

※出典;21世紀の資本
このグラフを見ると先進国の資本分配率αは徐々に右肩上がりに増加しているため、GDPに占める資本所得の割合が増加し、労働所得の割合が減少していっており、格差が拡大している状況が理解できるかと思います。

この点から考えても「r>g」により資本家と労働者の格差が大きくなっていく様子がわかるかと思います。
ピケティの資本主義の第2基本法則
続いて第2基本法則の説明です。
β;資本ストック
s;貯蓄率
g;GDPの成長率
この式を見るとs(貯蓄率)÷g(GDPの成長率)となっているので、sが一定でgが小さくなると資本ストックβが大きくなります。
これは先進国で考えると貯蓄率が一定のもとで、経済成長率が下がると資本ストックがどんどん大きくなるということであり、現在先進国の資本ストックはGDPの6が倍程度(β=600%)にまで膨れ上がっています。
※出典;21世紀の資本
このβが大きくなればなるほど、「資本収益率r>GDP成長率g」の効果によりさらに資本家と労働者の格差が広がっていきます。
資本主義の基本法則からピケティの主張を簡単にまとめる
・歴史的に見て資本収益率(r)>国民所得の成長率(g)
・富の格差を是正するには資本への累進課税が必要

ピケティの主張を簡単にまとめると、資本主義は「富む者は益々富み、貧しい者は益々貧しくなる」社会であり、それを是正するには「お金持ちからたくさん税金を取る」事で富の再配分をしようというものです。
世界中で富の格差は広がってきている
世界で富の格差が広がっている状況は以下の、米国とヨーロッパの上位10%層が総所得に占める割合を見れば一目瞭然です。
※出典;21世紀の資本
1900年から1950年は急激に富裕層のシェアが落ちてますが、この時期は2つの世界大戦やインフレ、世界恐慌、累進税などによる異例の格差是正期であったとしています。
その後特に1980年以降はアメリカでスーパー経営者と呼ばれる超高額報酬者が増えるようになり格差が広がって行っています。
以下に世界の企業の年間報酬の一例を掲載します。
企業名 | 名前 | 報酬額 |
グーグル | サンダー・ピチャイ | 約210億円 |
マイクロソフト | サティア・ナデラ | 約89億円 |
タイムワーナー | ジェフ・ブックス | 約35億円 |
アメリカにはこのような企業がたくさんあり、これらトップ企業の経営者や役員に報酬を多く出すことで格差はますます広がっているという状況です。
日本の経営者はここまで高額な報酬をもらっている方は少ないものの、日本でも格差は広がっていっています。
歴史的に見て資本収益率(r)>国民所得の成長率(g)
「r>g」のうちrは資本収益率を表し、gは国民所得(GDP)の成長率を表します。
資本収益率rとは具体的には、土地や建物、機械などの実物資本と、株式や債券などの金融資本の収益率のことです。
国民所得gとはGDPを表すので、先ほど解説した資本が生み出す収益と、労働所得の合計です。
GDPの三面等価の原則で「生産額=支出額=所得額」のうち所得額で考えると、
GDP=資本収益+労働所得
となり、結局は国民全体で得たGDPを資本と労働でどのように分け合うかということです。
これが仮に「r=g」だとすると資本の収益率も国民所得の成長率も同じになるため、国民所得(GDP)に占める労働所得の分配率も一定になります。
ところが現実にはピケティが分析した長期的なデータから「r=g」とはならず「r>g」になっているからこそ、格差が広がっていると指摘しました。
※出典;21世紀の資本
上記のグラフではなんと西暦0年からずっと「r>g」だったと歴史的に証明されています。
このグラフからすると資本収益率rはおおむね4〜5%の間にあり、投資で得られる収益とだいたい似通っています。

ピケティのすごいところは「r>g」という数式を実際のデータで示しており、さらにそのほとんどのデータを公開しているところです。
ところで0年からのデータをどうやって収集したのでしょう。。。
富の格差を是正するには資本への累進課税が必要
ここまでで資本主義社会では「r>g」の関係から所得の格差がますます広がっている状況を解説しました。
資本にかける累進課税とは
ピケティはこの状況を打開するために所得に対して税金をかける所得税ではなく、保有している資産に対して税金をかける累進資本課税が必要だといっています。
例えば以下のような純資産に対する課税を提案しています。
純資産額 | 累進課税 |
6億円以上 | 2% |
1.2億〜6億円 | 1% |
1.2億円以下 | 0% |
※120円/ユーロで円に換算
このように所得に対してではなく、持っている資本に対して行う必要があるとピケティは提唱しています。

ちなみに6億円の資産を持っている人であれば、年間で6億円×2%で1200万円の税金がかけられるということです。
たった2%かと思いますが、おいそれと受け入れられる金額ではないですね。
そして国がお金持ちから税金をかけることで得られた税収は、公共投資や社会保障の充実、貧困層への手当などを行うことで、富の再配分が行われ格差が徐々に解消されていくとしています。
主張は分かるが現実的に是正するのは難しい
ピケティの主張は正しいものの実際に実行に移すのは非常にハードルが高くなります。
なぜならある国でお金持ちから税金を多く取るようにしたとすると、お金持ちはその国から逃げて、別の税金の低い国へ移ってしまうからです。
じゃあ世界中で一律お金持ちから税金を取れば良いかと思いますが、お金持ちには権力者も多く、強い反発が起こることは必至です。
また現実としてお金持ちの資本が株式を通してお金が必要な人たちにお金が流れ、世界経済の発展につながっている面も多いにあります。
さらに、資本家の中には一生懸命頑張って資産を築いた人も多くいるはずで、資産を築いたためにたくさん税金で持っていかれては、資本主義のいい意味での競争性も失われる可能性があります。
こんな感じでお金持ちから税金でお金を取るというのは、現実的には難しいでしょう。
まとめ
ピケティの著書「21世紀の資本」について分かりやすく解説しました。
特に「資本収益率(r)>国民所得の成長率(g)」というのは、歴史的な統計データを元に裏付けられた事実であり、資本主義社会では投資をすることが有利だというのが分かりますね。
投資で血まなこになって利益を追い求めるというより、世界中に投資して経済成長率の高い国の発展に寄与し、その恩恵を受ける。
そんな感じで投資ができればいいなと個人的には思っています。