為替の調節機能が効かないユーロが抱える問題点

くわにゃん(@kuwanyan98)です。

投資に役立つ経済知識の第7弾は「為替の調節機能が効かないユーロが抱える問題点」についてです。

 

前回はデフォルトした国の通貨が一時的には大暴落しインフレになったあとに、通貨安によって輸出を中心に持ち直していく姿を解説しました。

✅関連記事;【投資に役立つ経済知識】第6弾 デフォルトした国の行く末・・・通貨の暴落が国を救う!? 

 

しかしデフォルトや危機に陥った場合に為替の自動調節機能が効かないのが、EU加盟国が使っている共通通貨であるユーロです。

ユーロの導入により為替がもつ自動調節機能と金融政策を放棄した状態です。

 

今回はEUの成り立ちと共通通貨ユーロが抱える構造的な問題点、およびこれまで起きたユーロの危機について解説します。

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EUの成り立ちとメリット

ヨーロッパの歴史

地図を見るとわかるようにヨーロッパは昔から小国の集まりです。

14世紀までのヨーロッパは貧しい辺境の地で、当時世界でもっとも繁栄していたのは中国でした。

ところが航海技術の発達により、スペインとポルトガルを中心に世界中にヨーロッパ人が進出するようになります。

 

そして世界各地に植民地を持ち莫大な利益を得るようになりました。

このころの時代は大航海時代とよばれ15世紀から17世紀まで続きます。

その後18世紀半ばには蒸気機関の発明によりイギリスで産業革命が起こり、19世紀になると世界最大の先進工業国となりました。

当時のイギリスは世界中から原材料を輸入して大量の工業製品を生産・輸出し、イギリスだけで世界の工業生産額の半分を占めていたことから、19世紀における「世界の工場」と呼ばれるほどになり、繁栄しました。

19世紀後半は帝国主義と呼ばれる時代で、イギリスを筆頭に力をつけたヨーロッパの国々は世界各地に進出し、植民地獲得競争を起こしました。

 

大航海時代、産業革命を経て世界中の富を牛耳ってきたヨーロッパの国々ですが、これらの時代を通して常に争いが絶えませんでした。

 

その最たる例が1914年から1918年にヨーロッパで起こった第一次世界大戦と1939年から1945年に起こった第二次世界大戦です。

この2つの大戦を通して莫大なお金を戦費に投入し、ヨーロッパ全土は戦争により甚大な被害を被ることになり、国力の低下につながりました。

 

イギリスに至ってはポンドが当時の世界の基軸通貨の地位から引き落とされ、世界の覇権をアメリカに明け渡すこととなりました。

EUができるまで

2つの大戦をとおしてアメリカとソビエト連邦(現ロシア)という超大国が軍事的、経済的に大きな力を持つようになりました。

 

そのような状況の中、1946年にイギリスの政治家チャーチルは自身の演説の中でヨーロッパをアメリカのような一つの大きな国家にすることを目指す「ヨーロッパ合衆国の創設」を訴え大きな反響を呼びます。

 

ヨーロッパ合衆国の創設の目的は以下の2点です。

  • ヨーロッパの国々がこれまでのように争うことなく、平和な社会をつくる
  • 政治的・経済的に協力しアメリカやソ連と対等に渡り合える大きな国家をつくる

その後これらの目的を果たすために、徐々にヨーロッパで統合の流れが進んでいきます。

ECSC、EEC、Euratomの誕生

まずは1951年にECSC(欧州石炭鉄鋼共同企業体)を設立し、戦争の火種となる石炭と鉄鋼産業を管理するようになりました。

 

1958年には、石炭や鉄鋼だけでなく経済全般で協力することを目的としたEEC(欧州経済共同体)が誕生し、ほぼ同時期に核エネルギーに関する協力を目的としたEuratom(欧州原子力共同体)が誕生します。

これらの設立後ヨーロッパの加盟国は当初の6カ国から12カ国へと大きく広がりました。

ECの誕生

1967年にはこれまで設立していたECSC、EEC、Euratomの3つの組織をまとめたEC(欧州共同体)が誕生します。

ECの誕生により運営機関が同じものとなり、冷戦期において西側経済圏を代表する国際機構の一つとなりました。

くわ
くわ

私が中学校でならったのはEUではなく、このECでしたので、懐かしい名前です。

EUの誕生

1993年にはそれまでのECの役割(1本目の柱)に加え、共通外交・安全保障政策の協力(2本目の柱)、司法・内政分野における協力(3本目の柱)を合わせた3本の柱構造をもつEU(欧州連合)が発足しました。

最終的にEUの発足により以下のメリットが得られるようになりました。

  • 軍事的な協力によるヨーロッパの安全保障
  • 関税の撤廃と人・物の移動が自由になり経済発展
  • アメリカに対抗できる巨大な経済圏

1951年の初期組織であるECSCができたときは6カ国の加盟国からスタートしましたが、以下の図のように現在(2019年8月)は28カ国にまで広がっています。

そしてEU発足後に起こった重要な出来事が1999年の共通通貨ユーロの導入です。

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ユーロが抱える構造的な問題点

ユーロ導入のメリット

ユーロの導入前のEU加盟国はそれぞれ別々の通貨を使って取引を行なっていましたが、共通通貨ユーロの導入により決済処理が楽になり物流が活発化することで、ますますEU経済の繁栄に貢献することになりました。

 

さらにEU加盟国がユーロを使うことで、アメリカドルに次ぐ流通量にまでなり、通貨としても大きな地位を築くことになりました。

順位 シェア
1 アメリカドル 87.6%
2 ユーロ 31.3%
3 日本円 21.6%
4 英ポンド 12.8%
5 豪ドル 6.9%

参考;国際決済銀行(2019年データ)

ユーロ導入のデメリット

導入当初は成功したかに見えたユーロですが、時がたつにつれていろいろな問題点が浮かび上がるようになりました。

ユーロが抱える構造的な問題点は以下の3つです。

  • 為替の自動調節機能が使えない
  • ユーロ導入国間の貧富の差が拡大する一方
  • 金融政策は同じなのに財政政策がバラバラ

為替の自動調節機能が使えない

共通通貨ユーロといってもEUに加盟している国々は経済状態も国の信用力も様々です。

以下の表はEU加盟国の国債格付け一覧です。

この表を見てわかるように、信用力が最大のドイツやオランダから、信用力が低いイタリアやギリシャまでがすべて同じユーロを用いています。

 

そのためユーロの価値はこれらEU加盟国全ての状態を評価して決められます。

下記の記事にも書いたように、経済がデフォルトなどの大きなダメージを受けた際は為替が暴落することで徐々に経済が回復してきます。

✅関連記事;【投資に役立つ経済知識】第6弾 デフォルトした国の行く末・・・通貨の暴落が国を救う!? 

 

これが為替の自動調節機能です。

経済を回復させるには通貨安にもっていくしかありません。

しかしユーロの場合はドイツやオランダなどの信用力が高い国からの信用もあるため、そう簡単には暴落しません。

 

そうするとデフォルトになった国でもユーロが中途半端にしか下落しないので、経済はなかなか回復せず、苦しい状態が長続きすることになります。

現在のギリシャがこんな感じです。

ユーロ導入国間の貧富の差が拡大する一方

ユーロ導入前はドイツはマルク、ギリシャはドラクマという独自通貨を使用していました。

しかしユーロ導入後はドイツもギリシャも同じユーロを使用するようになります。

 

ドイツ単独でのマルクの価値とドイツよりも信用力の低い国々を含めたユーロでは当然ながらマルクの価値の方が高いです。

そのためドイツはユーロを導入することで通貨安(日本だと円安)になったような感じです。

 

ギリシャはその逆で他のEU加盟国の信用の高さからユーロを導入することで、通貨高(日本だと円高)になったのと同じです。

 

こうなるとドイツは日本が円安になると景気がよくなるのと同じで、ユーロの導入により輸出競争力が増し、大きく経済発展しました。

 

一方ギリシャはユーロの導入によりドイツなどの強豪国と同じ土俵で戦わざるをえなくなり、輸出競争力がどんどん弱くなり、通貨高により購買力が突然上がったことで輸入量は増える一方となりました。

くわ
くわ

例えば円高により1ドル200円が100円になると、海外製品を半額で買えるようになります。通貨高は輸入する時にはメリットになりますが、輸出の場合は不利になります。

詳しくは以下の記事で解説しています。

✅関連記事;【投資に役立つ経済知識】第4弾 円高と円安 

 

これらの状況をドイツとギリシャの貿易収支のグラフで確認してみます。

まずドイツの場合はユーロを導入した2000年あたりから貿易収支(輸出額ー輸入額)は大幅に増えています。

出典;UNCTAD(国連貿易開発会議)

続いてギリシャの貿易収支は、もともとマイナスだったのが2002年以降急激に悪化しているのがわかります。

 

またドイツの貿易相手国は円グラフのとおり約6割は欧州です。

出典;外務省HP(2019年8月時点)

このようにユーロの導入により豊かな国はますます豊かになり、貧しい国はますます貧しくなっていきます。

くわ
くわ

ドイツはEUの中では一人勝ちと言われており、EU南部の貧しい国から批判が出ています。

金融政策は同じなのに財政政策はバラバラ

ユーロ導入後はEUの中央銀行として欧州中央銀行(ECB)を設立しました。

本来金融政策はそれぞれの国のインフレ状況や経済の状態を確認しながら決定されますが、ユーロ導入国は共通通貨を採用しているため、同じ金融政策をとらざるを得なくなりました

 

この金融政策も力の強いドイツの経済状況の影響を強く受けるため、インフレを抑制するために金利をあげたり、経済を活性化するために金利を下げたり、小国の判断では自由にできなくなり、力の弱い弱小国は経済のコントロールができなくなりました。

 

本来は金融政策と財政政策は同じセットとして扱う必要がありますが、財政政策の方はなかなか統一が進まずバラバラの状態です。

くわ
くわ

財政政策を統一するというのは例えば各国で稼いだお金を一度ひとまとめにし、EU本部で各国に再配分するというものです。

しかしその再配分の比率によっては、当然ながら不満が生じます。

そもそも争いを繰り返してきたヨーロッパの国々は宗教も違えば民族も違い、考え方や国民性が異なるので財政政策を統一するのは不可能に近いです。

 

実際になんども危機に陥っているギリシャと一人勝ち状態のドイツの主張としては、

ギリシャの主張;

「ユーロを導入してドイツは儲けまくっているんだから、貧しい国をなんとかしろよ」

ドイツの主張;

「だいたいまじめに働かないからそんなことになるんだ。これ以上無駄にお金を使わず、真面目に働けよ」

とお互いを批判し合っている状況です。

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これまでに起きたユーロ危機

ユーロ導入直後は順調にまわっていたEU経済ですが、2007年の世界金融危機以降、急速にユーロ危機が起きるようになりました。

以下の表はユーロ導入以降に起きた危機です。

支援額 原因
2010年 ギリシャ 1,100億ユーロ 財政統計の不正発覚による国債暴落と金利上昇による資金調達難。EU支援第1弾。
2011年 ポルトガル 780億ユーロ 慢性的な経常赤字・財政赤字の中、議会で財政再建策が否決され、国債暴落と金利上昇による資金調達難。
2012年 ギリシャ 1,300億ユーロ EU支援第2弾を受けるため国債保有者との合意に基づく「秩序だったデフォルト」
2012年 スペイン 1,000億ユーロ リーマンショック後に不動産バブルが崩壊。景気対策による財政赤字の拡大と格付け会社の格下げから国債金利が上昇し資金調達難。
2015年 ギリシャ 870億ユーロ EU支援第2弾を受ける中、反緊縮を掲げる連立政権が誕生し、債権団との交渉が難航し、デフォルトの危機。EU支援第3弾。

ギリシャに至っては何度も緊急支援を受けており、今も解決にはいたっていません。

 

この表には出てきていませんが、現在問題視されているのが、イタリアの債務危機です。

イタリアの経済規模は世界で8番目の大きさであり、ギリシャの約10倍もあるため、実際に債務危機となれば世界に与える影響も大きなものになると予想されています。

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まとめ

ヨーロッパの歴史から、EU設立、ユーロが抱える構造的な問題について解説しました。

ここまで何度も解説してきたようにEUの最大の問題は共通通貨ユーロを導入したことです。

ユーロにより経済状態がごちゃ混ぜの国々が共通の通貨を使用し、経済状態に合わせた独自の金融政策を取れずに苦しんでいます。

 

ユーロの導入により為替のもつ自動調節機能と金融政策を放棄した結果はどのようになっていくのか、誰も予測できません。

現在は共通通貨ユーロによってEU加盟国間の貧富の差がさらに拡大し、各国がいがみ合うことによって財政統合がますます遠ざかっている状況です。

しかし共通通貨ユーロとバラバラな財政政策という矛盾を解決しない限り、ユーロ危機が常につきまとうことになるでしょう。

 

今から考えるとユーロ導入前まではうまくいっていたように思いますね。

 

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