
資本主義と社会主義ってなんなの?中国は社会主義なの?
こんなお悩みにお答えします。
☑️本記事の内容
- 資本主義と社会主義について解説
- 急成長する中国は社会主義なのか?
☑️本記事の執筆者

投資歴15年超のサラリーマン投資家です。
私のブログでは投資初心者・中級者の方々に向けて基礎知識を短期間で身に付けられるよう分かりやすくまとめてます。ぜひご覧ください!
前回の記事✅ピケティが「21世紀の資本」で言いたかったことを簡潔に解説 では、ピケティが主張する「r>g」を使って、資本主義がかかえる矛盾点を解説しました。
今回はそもそも資本主義とはなんなのか?またその反対にある社会主義とはなんなのか?について成り立ちから分かりやすく説明します。
社会主義はソ連の崩壊で終焉したように見えましたが、社会主義国である中国は現在大きな成長をとげ、やがて世界最大の経済大国となることが予想されています。
そんな急成長する中国の「国家社会主義」と言われる体制についても解説します。
資本主義とは
資本主義の特徴
資本主義というのは「個人で自由にお金儲けして良い」という社会です。
資本を多く持ったものが有利に資本主義というゲームを生き抜くことができる弱肉強食の世界です。
資本主義の国では企業や土地などは国のものではなく、民間のものです。
そして民間の企業はお金儲けのためにお互いに競争し合い、市場の競争原理にまかせて世の中が効率化されていきます。
競争することで新しい技術や商品が次々と開発され、また価格競争によりいいサービスが安価で提供されるようになります。
実際資本主義のおかげで19世紀以降、世の中は爆発的な進歩を遂げました。
今やスマートフォン片手に買い物をすることができ、買ったものは翌日に配達され、無料で音楽を聞くことができ、Youtubeを使えばいつでも無料で面白い動画を見ることが可能です。
このように資本主義によって発展した世の中の恩恵を我々はたくさん受けています。
そんな資本主義ですが、市場の競争原理にまかせっぱなしにすることで頻繁に暴走してきました。
日本では1990年のバブル期に地価が数年で250%も高騰し、2000年のアメリカのインターネットバブル期には通信関連銘柄が多いNASDAQが数年で500%高騰、2008年のアメリカ住宅バブルが弾けた後には世界的な金融危機を引き起こすほどの大問題となりました。
これらすべてが資本主義の欲望むき出しの競争原理にまかせたために起こった結果です。
こういった市場の暴走を防ぐために政府が市場に積極的に関与する(規制をかける)のが「大きな政府」、市場の競争原理に出来るだけ任せようというのが「小さな政府」といわれます。
市場としては出来るだけ規制がない方がいいので「小さな政府」が好まれますが、競争に次ぐ競争の結果資本主義社会では格差が拡大してしまうという大きな問題があります。
要するに「富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」というのが資本主義社会です。
資本主義のメリットまとめ
資本主義のメリットをまとめると以下の通りです。
- 企業間の競争により技術・商品開発が進む
- 高品質で低価格の製品が生まれる
19世紀以降は資本主義のおかげでここまで便利で発展した世の中になりました。
資本主義のデメリットまとめ
つぎに資本主義のデメリットをまとめます。
- 貧富の格差がどんどん広がってしまう
- 大量生産・大量消費を基本とするため無駄が多い
資本主義はこれまで解説してきたように、貧富の格差がどんどん広がっていく社会です。
参考にアメリカの企業の年間報酬の一例を掲載します。
企業名 | 名前 | 報酬額 |
グーグル | サンダー・ピチャイ | 約210億円 |
マイクロソフト | サティア・ナデラ | 約89億円 |
タイムワーナー | ジェフ・ブックス | 約35億円 |
アメリカにはこのような企業がたくさんあり、これらトップ企業の経営者や役員に報酬を多く出すことで格差はますます広がっているという状況です。

世の中には綺麗な水さえ満足に飲めない人たちがいる中で、能力の違いがあるにしても同じ人間でこれだけの報酬をもらっている人がいると思うと、資本主義が必ずしもいいとは言えませんね。
資本主義が広がっていった19世紀の後半にもイギリスをはじめとして「失業」と「貧富の差の拡大」が問題となり、餓死者が多く出るほどの危機的な状況になりました。
そんな中で本当に資本主義がいい社会なのかと疑問を投げかける人たちが多く出てきます。
その筆頭として登場したのがドイツのカール・マルクスです。
カール・マルクスは著書「資本論」の中で資本主義の問題点を痛烈に批判し、「社会主義」という概念を発表し、広めていくことになります。
社会主義とは
社会主義の特徴
社会主義の国というの「儲けたお金はすべて国が管理し、みんな平等に暮らそう」というのを目指す社会です。
(ちなみに国が管理せず、お金を共有しようというのは共産主義です)
ソビエト連邦が1917年に世界初の社会主義国となりました。
社会主義の国では全ての企業や土地が国のものです。
そして国があらゆる面で経済を計画的に管理します。
例えばみんなが食べる物や服、靴に到るまで全てのものが、国がどれだけの量を作るかを決めて、その計画通りに国民に作らせます。
そして同じ職の人なら能力の有る無しに関わらずみんなに同じ給料を払い、作った商品についても国が決めた価格で国民に売ります。
国が全てを計画通りに動かす経済なので「計画経済」と呼ばれます。
このようにすべてを国が決めるというのは平等という点においてはいいような気がしますが、競争が全く生まれない国というのはどうなってしまうでしょうか?
一生懸命働いてもサボっている人と給料が同じならどうでしょうか?
私なら出来るだけサボります。
こういう状況だと、アイデアを出して効率よくする意欲も製品の品質を改善する意欲も削がれてしまいます。
そして働かない人が増えるとものを作った量を示すGDPは当然ながら下がります。
GDPが下がるということはみんなが平等ではあるものの、平等に貧しくなる社会が生まれてしまいます。
みんなが貧しくなり生活が苦しくなってくると、国民からは国に対して不満がどんどん溜まってきます。
そしてみなさんのご存知の通りソ連は1991年末に崩壊しました。

私はちょうど小学生の時で学校の先生が「ソ連が崩壊って、歴史に残る大変なことが今日起こったんだよ」って言っていたのを覚えています。
2016年時点で世界で社会主義の体制をとっている国は以下の赤い地域の国々です。
中国、ベトナム、ラオス、キューバ、北朝鮮の5カ国だけです。
意外と少ないですね。
社会主義のメリットまとめ
社会主義のメリットをあげます。
- 平等な社会ができる
- 計画的に生産されるので無駄がない
- 企業間で無駄な競争が起きない
資本主義は良くも悪くも人間の欲望をむき出しにさせ、利益を上げるために大量生産、大量消費、そして大量廃棄が問題となるので、社会主義のこれらのメリットは見習うべきところがありそうです。
社会主義のデメリットまとめ
つぎに社会主義のデメリットをあげます。
- 競争がないため、やる気がそがれ平等に貧しくなる
- なんでも計画的に行われ、多様性が生まれない
これらは生きていく上で非常に重要なものです。
資本主義社会に見られるように競争することでいろんな新しい技術や商品が開発され、今の発展した世の中があることを思うと、社会主義に見られるこれらのデメリットはいただけません。
中国は社会主義?資本主義?
2000年代以降急速に発展している中国ですが、中国はご存知のように現在でものこる数少ない社会主義国です。
しかし実態はどうでしょうか?
中国の成り立ちから、中国が進める社会システムをわかりやすく解説します。
中華人民共和国の成り立ち
中国共産党が国民党を台湾へ追いやり、1949年10月1日に毛沢東を最高指導者として社会主義国家である中華人民共和国を設立します。
毛沢東は「大躍進政策」や「文化大革命」を通して中国を発展させようとしましたが失敗に終わり、何百万人もの特に知識階級の人たちが犠牲になったと言われています。
毛沢東の死後、鄧小平が毛沢東のあとを引き継ぎ「中国式社会主義」と呼ばれる一部資本主義を取り入れた社会システムに進むようになります。
鄧小平がとった政策は次のようなものです。
- 外国資本を受け入れる経済特区の新設
- 価格統制の緩和
- 国営企業の民営化
これらの政策によって中国は急速に発展していきました。
10年ほど前に私は旅行で写真に写っている上海にいきましたが、高層ビル群には驚かされました。
現在の中国は、資本主義の仮面をつけた社会主義国家
中国は現在でも中国共産党が唯一の指導政党で、社会主義国家です。
ただ社会主義国家といっても「資本主義の仮面をつけた社会主義国家」と言われるように、経済の実態としては資本主義のいいところを取り入れ、重要なところは中国共産党が主導するといった感じです。
社会主義国家と言いながら、中国の企業に占める民間企業の割合は2017年時点で約90%にも達しているのが実態です。
また中国共産党が唯一の指導政党であるため政党間の争いなどがなく、長期目線で経済政策などを計画・実行することができます。
国家プロジェクトを強力に推し進めることができる
一帯一路構想
例えば2014年に習近平総書記が提唱した「一帯一路」という巨大プロジェクト構想があります。
一帯一路構想は広域経済圏構想で、中国からユーラシア大陸を経由してヨーロッパにつながる陸路の「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ海路の「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画である。
※Wikipediaより引用

「一帯一路」構想は簡単にいうとアジアとヨーロッパを結ぶ陸路・海路のインフラを整備し、経済を活性化させようという世界規模の構想です。
そしてこの「一帯一路」構想は今やデジタル覇権へと舵を切り、「デジタル一帯一路」と言われるようになってきています。
デジタル一帯一路構想
BATという言葉をご存知でしょうか?
BATは中国版GAFA(Google、Apple、FaceBook、Amazon)とも言える企業で、百度(検索エンジン)、
今や中国ではモバイルを使う場合に、これら3社が手がけるサービスやアプリの使用に75%以上もの時間を費やすほど高いシェアを持っています。
※引用;BUSINESS INSIDER
これらの企業は純粋にGAFAのように資本主義の競争の中で生まれた訳ではなく、国家ファンドから資金支援が行われたり、資本主義国家では考えられないような規制によって米国企業の侵略から守られたりして、BATは急成長してきました。
実際に中国ではGoogleやFacebookが規制により使えませんし、Amazonは中国から撤退しました。
残るはAppleですが、中国での2020年のiphoneのシェアは以下の通り10%程度でした。
企業名 | 国 | 市場シェア |
Huawei | 中国 | 38.3% |
Vivo | 中国 | 17.7% |
Oppo | 中国 | 17.4% |
Xiaomi | 中国 | 12.0% |
Apple | アメリカ | 11.1% |
その他 | ー | 3.5% |
合計 | ー | 100% |
この表を見ると中国でスマホのシェアを握っているのはApple以外は中国のメーカーです。
特にHuaweiは4割弱と圧倒的なシェアを誇っています。
Huaweiは中国のデジタル一帯一路構想の5G分野の重要な鍵をにぎる企業で、米国トランプ大統領時代に制裁を受けましたが、2020年時点ではまだそんなに大きな影響は出ていません。
世界のトップ企業であるGAFAですら中国ではこのあり様です。
良い悪いは別にして、国家が長期目線で戦略を決めて、規制や巨額資金の援助により強力にバックアップしていく、いわゆる「国家資本主義」というのが現在の中国の体制です。
まとめ
資本主義と社会主義についてまとめました。
これまで資本主義の国々は人間の欲望をうまく満たす形で大量生産・大量消費をもとに急成長してきました。
しかし最近は少ないもので生活をするミニマリストや定額制サービス(サブスク)の普及によって、資本主義のあり方も変わってきていて、大きな転換期を迎えているように思います。
そんな中で社会主義国家である中国の台頭。
ただ中国もこれまで解説したように完全な社会主義国家ではなく、ほとんど資本主義のような体制です。
今後は資本主義と社会主義がいい具合に混ざり合い、新しい経済システムが出来上がるかもしれませんね。