休日に子供と遊んでいる時に仕事のことが気になったり、仕事をしている時に投資のことで頭がいっぱいになったりと、目の前でやっていることと違うところに意識がいってしまうことはよくあることだと思います。
さらに最近はスマホが普及し、どこでもネットやSNS、YouTubeなどにアクセスできるようになり、食事中でも通勤中でも何かしらの情報に触れられるようになりました。
そうなるとますます目の前のことに意識を集中する時間というのが減ってきていると思います。
脳科学の研究によるとこのような状態が続くと脳が疲労し、なかなか疲れが取れなかったり、不安感が増幅したり、人生に対する幸福度が低下してしまうということが分かってきているようです。
今回の記事はそんな状況を打破すべく欧州を中心にメジャーになったマインドフルネスについてその内容と効果、実践法などを分かりやすくまとめて書こうと思います。

マインドフルネスは簡単そうで意外と継続するのが難しいのですが、実践すれば確実に効果が出る方法だと思ってます。
興味がある方は是非実践してみてください。
マインドフルネスとは
マインドフルネスというのは「目の前で起きていることに集中することで悶々と悩む状態から解放され、心を落ち着けるテクニックの総称」です。
マインドフルネスは、もともとは仏教の考え方の一つだったものが、欧州で宗教的な要素を排除した心を落ち着けるテクニックとして広がり、最近になって日本でも注目されるようになりました。
もともと東洋にあった思想が日本に逆輸入された感じですね。
マインドフルネスは医療の分野では、慢性不安、うつ病、怒り、依存、強迫行動、不眠、筋肉の緊張、性機能不全などの症状改善に使われたり、仕事や趣味やスポーツでよりよい成果を上げるために利用されるケースが増えているようです。
マインドフルネスはアメリカの企業ではGoogleやAppleなど、日本の企業ではメルカリなどで取り入れられています。
スティーブ・ジョブズが瞑想や禅の世界に傾倒していたことは有名で、その思想がシンプルなデザインという形でApple製品に反映されていると言われています。
マインドフルネスとは先に書いたように「ほかのことに気をとられたり、上の空で考え込んだりせず、『今この瞬間』に目の前で起こっていることをそのまま体験する」というものです。
それは普段悩んでいるようなことから解放され、自然な状態で心を落ち着けることができている状態です。
でもなぜその状態がいいのか?
もう少し詳しくみてみます。
私たちは世の中で起きたことは全て「自分の心というフィルター」を通して個人個人が経験します。
事象は同じであっても受け取り方は千差万別で、この世の中全てが「心のフィルター」次第で如何ようにも変化するとも言えます。
こう考えると、マインドフルネスにより悩みから解放され心を落ち着けることで「心のフィルター」をピカピカにできるのであれば、心が関係する行動であれば何でもマインドフルネスによる良い効果が得られるというのは理解しやすいのかもしれません。
マインドフルネスの効果
マインドフルネスの効果については、以下の記事に書いたように欧米を中心に脳科学的に証明されるようになってきました。

マインドフルネスによる代表的な効果をざっとまとめると以下のようになります。
- マインドフルネスは幸福感に関係する脳の部分を活性化させる
- マインドフルネスはネガティブな感情を和らげる
- マインドフルネスは不安を減少させる
- マインドフルネスでストレスに強くなるよう脳の構造が変わる
- マインドフルネスは不安や抑うつを軽減する
- マインドフルネスで生活の質が改善する
- マインドフルネスはストレス下でのパフォーマンスを向上させる
これらは大学や研究機関等で脳波測定やモニタリングなどによって得られた客観的な研究結果ですが、
「ではなぜこれらの効果が得られるのか?」
っていうのが気になるところです。
この問いに対しては、マインドフルネスによって得られる次の効果によるものと考えられています。
- 集中(心の落ち着き)
- 深い理解
マインドフルネスによりあらゆる行動をその場で体験することで、例えばご飯を食べながら悶々と仕事のことを悩んだり、通勤中に家庭での夫婦喧嘩のことを思い出してイライラするなどの雑念が生まれにくくなります。
さらにマインドフルネスの実践によって、自分がどういう状況でどういう感情が生まれるかが客観的に理解できるようになります。
自分の感情への理解が深まると、ストレスが生じる前にそもそもストレスが生じないように対処できるようになり、ためにならない非生産的な思考や感情に翻弄されず、自分の望むような対応ができるようになるようです。
この「集中と深い理解」というマインドフルネスによる効果が、ストレス耐性や幸福感といった昨今の研究結果につながっていると考えられているようです。
マインドフルネスの実践法
マインドフルネスの実践には大きく分けて2つあります。
- 瞑想
- あらゆる行動をその場で体験する
瞑想
瞑想についてはいろんなやり方があるので自身にあったやり方を見つけると良いかと思いますが、ここでは代表的なやり方を紹介します。
- 息を吸って息を吸っていることに気づき、息を吐いて息を吐いていることに気づく(10呼吸)
- 息を吸って体全体に気づき、息を吐いて体全体に気づく(10呼吸)
- 息を吸って心が静まっていることに気づき、息を吐いて心が静まっていることに気づく(10呼吸)
- 息を吸って喜びを感じる、息を吐いて喜びを感じる(10呼吸)
呼吸は腹式呼吸が基本でゆっくりと音を立てずに行います。
また瞑想で1から順番に数を数えていくなどの方法がありますが、多分上記のように集中するポイント(気づきの対象)を持ったほうがやりやすいと思います。
ポイントは雑念が浮かんだら「ふっ」と吹き飛ばし、また呼吸に集中することです。
心がざわつこうが、静まろうが「ただそれに気づく」ということが重要で、リラックスできたから良い瞑想というわけではなく、
- 「気づいている(←瞑想)」or
- 「気づいていない(←瞑想ではない)」
というだけなようです。
あらゆる行動をその場で体験する
先ほどの瞑想については朝起きた時や仕事から帰って寝る前など、瞑想のために時間を別途作る必要があります。
しかし「あらゆる行動をその場で体験する」というのは、いつもやっている行動に「気づき」を入れて集中して行うだけで出来ます。
これには例えば
- ご飯を食べる
- 最寄り駅まで歩く
- 子供と公園で遊ぶ
などなど日常の行動が挙げられます。
この場合でも先ほど書いたように集中するポイント(気づきの対象)を持った方がやりやすいと思います。
私たちは外部の情報を「視覚・聴覚・嗅覚・触覚」によって受け取っています。
例えば「歩くマインドフルネス」の場合は、
- 歩いている時に目に見えるものに軽く集中する
- 歩いている時に聞こえてくる音に軽く集中する
- 歩いている時に匂いに軽く集中する
- 歩いている時に足が地面に触れる感覚に軽く集中する
これらを繰り返すと心が鎮まり、やがて歩くという行為全体に集中できるようになります。
この場合も呼吸はゆっくりと行い、心がどこかに行っていたことに気づくたびに集中するポイントに緩やかに意識を戻すことの繰り返しです。
マインドフルネスの誤解
マインドフルネスを実践するにあたり、多くの人が持つ誤解についてまとめます。
- 瞑想によって雑念が増えたと感じる
- 不快な感情をブロックして感情をコントロールできるようになる
- 無心になるために努力して何かを起こさなければならない
瞑想によって雑念が増えたと感じる
「雑念を無くして心を静めるために瞑想をしましょう」などと本などに書いてあったりしますが、実際に瞑想を実践してみると、雑念が噴水のように湧き上がるように感じ、たった1分も呼吸に集中できないことがよくありました。
自分だけおかしいのかなと思っていたら、これは瞑想を始めたばかりのころによくあることだそうです。
そもそも普通の人は日常の生活で、何も考えずじっと座ったままでいるという経験がありません。
瞑想ではこれまで見たことがなかった感情というものを懐中電灯で明るく照らしてじっくりと見ていくような行為であるため、瞑想によってもともとあった雑念にただ気づいたというだけなようです。
これが瞑想によって雑念が増えたと感じる原因のようです。
不快な感情をブロックして感情をコントロールできるようになる
マインドフルネスを実践すると不快な感情に捉われなくなるというのをよく見かけます。
しかしこれはマインドフルネスによって浮かんでくる感情をブロックできるようになり、思考を自由にコントロールできるようになるというものではありません。
思考というのは逃れたり止めたりできるものではなく、いつでも勝手に浮かんでくるものです。
もし思考を完全にコントロールできるのであれば、不快なことを考えず楽しいことだけを考えて生きられるように人は進化すれば良かったと言えます。
しかし進化の過程でそうならなかったのであれば、不快な感情にも意味があるはずです。
例えば
- 仕事がきついからたまにある休暇が嬉しいように、
- 空腹があるから料理が美味しいと感じられるように、
- 雨の日があるから晴れた日が清々しいと感じるように、
- 都会に住んでいるから大自然が気持ちいと感じるように
心地いい感情と不快な感情とは表裏一体で、人生を彩るのに必要不可欠なものと言えます。
感情はコントロールすることができないけれども、感情を意識し、認識し、味わい、感情と共に生きる一方で感情に振り回されない方法を見つけること。
感情はコントロールするのでは無く、むしろコントロールすることを手放すことがマインドフルネスの目指すところのようです。
無心になるために努力して何かを起こさなければならない
マインドフルネスを実践していると思考が止まらないことがあります。
そうなるとなんとか雑念をブロックし、心地いい感情だけに集中するようなことをしたくなります。
これまでの人生で行ってきた一生懸命勉強したり、スポーツを上達するために努力を積み上げていくイメージで。
しかし、静かな湖面に石を投げ入れてできた波を抑えるには、何か努力して波を抑えるのでは無くただぼーっと見守るしかないように、無心になるには努力では無く、ただ呼吸や集中するポイントに「気づく」というのが正解なようです。
まとめ
マインドフルネスについて私が本などで学んだ中でも有意な情報についてまとめました。
詳しい実践方法などは、マインドフルネスについての本を読むといいかと思います。
おすすめはアンディ・プディコム著【頭を「からっぽ」にするレッスン 10分間瞑想でマインドフルに生きる】という本で、この記事もこの本を参考にしています。
ビルゲイツもこの本をマインドフルネスの導入本として薦めているため、結構有名な本みたいです。
先にも書きましたが、心というフィルターを通してこの世の中を見ている以上、その部分を適切にトレーニングすることが人生の幸福度の向上につながると思います。
さらに心というのは人それぞれなので学ぶことも必要ですが、結局は実践を積み重ねて自分の心と向き合うことが重要だと思います。
何を手に入れたとしても、自分の心と向き合わないことには幸福な人生は始まらない、ということかもしれません。
そして最終的にたどり着くのは、子供の頃に明日のことなど考えもせずに、目の前のことに夢中になってワクワクと過ごしていた、そんな生き方なのかもしれませんね。